サーバントリーダー聖書的な10の属性

①傾聴(Listening)

ヤコブの手紙1章19節~20節  わたしの愛する兄弟たち、よくわきまえていなさい。だれでも、聞くのに早く、話すのに遅く、また怒るのに遅いようにしなさい。人の怒りは神の義を実現しないからです。

サーバントリーダーは、まず人の話を聞く心の態度を持つことが必要である。相手を大切にしているという思いから、聞く、話す、感情(怒りを含む)のリアクションの順番が書かれている。まず、相手の話を聞くことで、相手は、大切にされている、自分に関心があると思ってくれるに違いない。相手の話を聞くことで、自分の話も聞いてもらえるようになるのである。

②共感(Empathy)

2コリントの信徒への手紙1章 4節~6節  神は、あらゆる苦難に際してわたしたちを慰めてくださるので、わたしたちも神からいただくこの慰めによって、あらゆる苦難の中にある人々を慰めることができます。キリストの苦しみが満ちあふれてわたしたちにも及んでいるのと同じように、わたしたちの受ける慰めもキリストによって満ちあふれているからです。わたしたちが悩み苦しむとき、それはあなたがたの慰めと救いになります。また、わたしたちが慰められるとき、それはあなたがたの慰めになり、あなたがたがわたしたちの苦しみと同じ苦しみに耐えることができるのです。

人が感じている苦しみ、悲しみ、悩み、困難な状況に自然に共鳴するのは、難しい。しかし、私達がそれぞれの人生で直面する試練や危機的な状況、絶望的な状況で感じる苦しみ、悲しみ、憤り、やりきれなさなどの気持ちや感情は、その時は絶えれないほどのものであるかもしれない。しかし、その後の人生で誰かが悲しもの中に沈んでいる時、苦しみに打ちひしがれている時、悩んでいる時に共感できる力になるはずである。また、共感は、人生で身に着けていけるものである。相手のことを真剣に考え、相手の立場にたって相手の心を感じたいと、強く思うときに、共感する力が湧いてくるであろう。サーバントリーダーは、共感する力を身に着けていくものである。

③癒し(Healing)

マタイによる福音書 11章 28節~30節 疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい。休ませてあげよう。わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎを得られる。わたしの軛は負いやすく、わたしの荷は軽いからである。」

私たちは、心に重荷を負い、疲れることもある。聖書の中で、イエスは私たちの心の負担を共に背負い、休ませてくださる。イエス・キリストのように相手の傷や心の重荷を私たちも共に担うことができれば、癒しが与えられるであろう。鍵になるのは、柔和で謙遜なものになること。相手の心をじっくり受け止め、決して、教えたり解決策を提示するのではなく、心に寄り添い重荷を担おうとすること。そこに癒しが生まれ、安らぎを感じられる可能性がある。人はサーバントリーダーに接することで癒しの気持ちが感じることができるであろう。癒されたものには、また立ち上がる元気が生まれる。

④気づき(Awareness)

テモテへの手紙一4章 16節  自分のことと教えとに気を配り、それをしっかりと守りなさい。そうすれば、あなたは自分自身と、あなたの言葉を聞く人々とを救うことになります。

自分のことと教えてとに気を配りと書いてある。まずは、自分自身をよく知ること、深く知ることが大切である。自分自身を知ることをなおざりにすると、偽善者になってしまう。自分はできていないのに、相手にばかり要求するものとなってしまう。そのようなリーダーに、人はついていこうとはしないであろう。まずは、自分をよく知り心を掘り下げること。自らの感情の動きも把握すること。

箴言27章 23節  あなたの羊の様子をよく知り群れに心を向けよ。

聖書には、あなたの羊の様子をよく知っておけと書かれています。羊一匹一匹同じように見えても、それぞれの状態は違うのだ。本当に意識していないと、一匹の変化に気づくこともなく、集団にしか見えなくなる。同様に、一人一人に心を注いでいないと、気づくこともない。サーバントリーダーは、周りの人々に心を配り、繊細に観察する力を養う必要がある。心を尽くして、人とコミュニケーションを図るときに、いろいろな気づきが生まれ、必要なニーズを取りこぼすことなく、サポートしていく言ことができるようになるのである。

⑤納得(Persuasion)

箴言16章21節  心に知恵ある人は聡明な人と呼ばれる。優しく語る唇は説得力を増す。

知識でなく、知恵である。知恵とは何か。相手が理解できるように伝える力であろう。相手を知り、相手が分かりやすいように、優しく語ること。一方的に伝えるのではなく、相手が理解できるのを確かめながら、伝えていくときに相手は、受け入れる土台ができ、納得していくことができる。サーバントリーダーは、聞き手の心を考えながら、コミュニケーションを図って大切なメッセージを伝えていくのである。

⑥明確なビジョンと伝達力 (Conceptualization)

箴言29章18節  幻がなければ民は堕落する。

私達には、ビジョンが必要だ。どこに向かっているのか、将来に希望があるのか、どんな素晴らしい未来が待っているのか、ビジョンを持ち、示すことができるのはサーバントリーダーにとって必要な資質だ。神様から与えらえれた強い明確なビジョンを持ち、周りにいる人々をインスパイアーして導いていくことの大切さをサーバントリーダーは知っている。また、ただビジョンを持つだけではなく、それを周りの人々が理解できるように伝えることができるのもサーバントリーダーの特質である。

⑦先見力、予見力(Foresight)

ヘブライ人への手紙11章 1節~3節  信仰とは、望んでいる事柄を確信し、見えない事実を確認することです。昔の人たちは、この信仰のゆえに神に認められました。信仰によって、わたしたちは、この世界が神の言葉によって創造され、従って見えるものは、目に見えているものからできたのではないことが分かるのです。

聖書的なサーバントリーダーは、信仰によって将来に起こることを確信する力が与えられる。それは、聖書に書かれている神様の約束を信じているからである。今、目の前に見えていることだけではなく、これから未来にわたって起こるであろうことを信仰の心の目で見通していくことができるのである。

⑧謙虚さと与える心(Stewardship)

1ペトロの手紙5章5節  同じように、若い人たち、長老に従いなさい、皆互いに謙遜を身に着けなさい。なぜなら、「神は、高慢な者を敵とし、謙遜な者には恵みをお与えになる。」からです。

謙遜な心、謙虚な心は、関係に潤いを与える。逆に高慢な心は、争いや不和を生み出すきっかけになる。高慢であると、自身に非があっても認めることもできず、謝ることもできなくなる。そして、関係にひびが入り、壊れていく。また、高慢であると、他者から学ぶことが少なくなり、人生の豊かさを実感することも少なくなるであろう。神様は高慢なものを敵と言われている。それほど、謙虚さを重んじておられているのだ。

使徒言行録20章35節  あなたがたもこのように働いて弱いものを助けるように、また、主イエスご自身が『受けるよりは与える方が幸いである』と言われた言葉を思い出すようにと、わたしはいつも身をもって示してきました。

何を受けるか、自分にはどんな利があるのか、何をもらうことができるかなど、自然に心が支配されるのが人間の性であろう。自分がかわいいし、自己保身もある。聖書は、与えることのすばらしさを教えてくれている。誰かのニーズを満たすこと、もらうのではなく、与えることの喜び、幸せが説かれている。

サーバントリーダーは、謙遜な心をもって、周りとの関係を築き、与える心をもって周りの人々のニーズを満たしていくことができる資質を兼ね備えていくのである。そこに信頼が生まれ、そのチームの絆は深くなっていく。

⑨人々の成長に関わる(The growth of people)

1コリントの信徒への手紙8章1節  知識は人を高ぶらせるが、愛は造り上げる。

サーバントリーダーの周りにいる人々は、成長していく。聖書は、愛が人を造り上げると語っている。愛のある所に、安心感と信頼感が醸成され、成長する自らの意欲が生まれ、人は育っていくのであろう。形式的なことや、専門的な知識、マニュアルだけでは、真の人の成長は望めない。そこに愛が必要なのである。サーバントリーダーは、愛を身に着けていく。その愛は、神様からくる無条件の愛である。無尽蔵に注がれる愛、その愛を周りの人々に分け与えていくことで、人間関係に潤いを与え、成長する人々の集団が形成されていく。

⑩コミュニティ作り(Building community)   

ヨハネによる福音書13章 34節~35節  あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。互いに愛し合うならば、それによってあなたがたがわたしの弟子であることを、皆が知るようになる。」

聖書には、互いに愛し合うことが書かれている。愛は、関係を築くために人と人を強く結びつける根幹にあるものである。キリストが愛したように愛しなさいと書かれている。キリストは、損得勘定なしに、無条件に人々を受け入れ、不治の病の人に触れ、貧しい人々と共に歩んだ方だ。そのような無条件の愛で愛せよと書かれている。相手から好かれようとして、尽くすのではなく、相手の反応を気にせずに愛し続けることに本物の愛があるのだ。サーバントリーダーは、自分自身が、神様、イエス様から無条件に愛されていることを実感し、その愛で、周りの人々を愛し続ける。そんなリーダーなので、周りに絆の深いコミュニティーが形成されていく。